なぜ現金を出品してはいけないのか FinTechの規制
ネットフリーマーケット大手メルカリで現金が出品されていることが話題になり、それを受けて運営が素早く禁止措置を取ったところ、今度はチャージ済みのSuicaやPASMOが出品されまたそれが禁止されるなど、今さら付け焼刃でFinTech周りの勉強をしている向き(=自分)にはかっこうのテーマなので考えてみた。
まず現金出品について。
これらは以下が目的だと指摘されている。
1)クレジットカードのショッピング枠を換金すること
2)出品したアイテムの販売代金を(銀行口座への出金を経ずに)そのまま買付け代金に充当すること
1-A) クレジットカード規約
まずクレジットカード規約で換金目的利用は禁止されている。
「換金を目的とした商品購入の疑い等」は会員資格取消事由(三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(個人会員用)23条1項4号)
まず現金出品について。
これらは以下が目的だと指摘されている。
1)クレジットカードのショッピング枠を換金すること
2)出品したアイテムの販売代金を(銀行口座への出金を経ずに)そのまま買付け代金に充当すること
1-A) クレジットカード規約
まずクレジットカード規約で換金目的利用は禁止されている。
「換金を目的とした商品購入の疑い等」は会員資格取消事由(三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(個人会員用)23条1項4号)
「会員は、カードショッピング枠の現金化を目的として商品の購入等にカードショッピングを利用することはできません。」(オリコカード クレジットカード会員規約4条2項)
現金を購入する行為がこれらの禁止規定に該当することは間違いないだろうが、現金出品禁止についてメルカリはそこには言及せず「マネーロンダリングの恐れがある」という理由を挙げている。自社サービスの範囲外だから、クレジットカードの問題はクレジットカード会社が対処せよ、ということだろうか。
1-B) 貸金業法
クレジットカードで購入した現金を先に手にして、一ヶ月以上後に銀行口座から引き落とされる形で返済するのは実質的に金銭貸借である。「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介」を業として行うには貸金業の登録が必要で(貸金業法1条)、金利や総量規制等の規制に服することになる。
これらの問題があるため現金出品を禁止したところ、チャージ済Suica等が出品されそれらもまた禁止されたというのだが、これらはメルカリに限らず一般的な換金性で考えられるだろう。
一般的な換金性に関しては、上記クレジットカード規約上の「換金を目的とした商品購入であるか」、貸金業法に関しても同様に実質が商品売買か金銭貸借であるかが個別具体的に判断されることになろう。
ただし、SuicaについてはそもそもJR東日本が貸与したものであるから利用者が販売することはできないのだが(東日本旅客鉄道株式会社ICカード乗車券取扱規則5条)、メルカリはそこには言及していないようで、これもJR東日本と出品者の問題というスタンスなのだろうか。ちなみにヤフオクではプリペイドカードを含む金券類について「出品時、自分の所有物として手元に現物を所持した状態であること」(ヤフオク!ガイドライン細則C11)となっているからSuica出品は自社サービス規約違反となるが、メルカリ利用規約には同等の規定が見当たらなかった。
2)メルカリ口座
ここから今が旬の(遅い?)FinTechと話が重なってくる。
メルカリ利用規約によれば、出品アイテムの販売代金は一年以内に引き出すか、他の商品購入代金へ充当することになる。これはメルカリに利用者のお金をプールしておくことに他ならないので、これをメルカリ口座と呼ぼう。
2-A) 出資法
「他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」(出資法2条)のであって、銀行等以外は預り金が禁じられている。
2-B) 資金決済法
とは言え、買物の支払いに充てられる「〜口座」的なものやプリペイドカードは身の回りに多く、これらは2010年に制定され2016年に改正された資金決済法に基づいている(例えばLINE Pay社は同法の資金移動業登録済)。資金決済法では①前払式支払手段発行、②資金移動業が定められており、また議論の末に資金決済法には含められなかった③ポイント制度も似た機能を持っている。
2-B-① 前払式支払手段
元は商品券に対する規制から始まり、今ではプリペイドカードがもっぱらこれに該当する。読んで字のごとく対価を先に支払うが、基本的に出金=払い戻しができない(資金決済法20条2項)。
よって、出金が前提のメルカリ口座は前払式支払手段には該当しない。
2-B-② 資金移動業
従来銀行だけが認められていた送金業務(為替業務という)が資金決済法によって少額なものに限り資金移動業者に認めれられるようになった。送金(為替)とは「各地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動する」ことである。これだと出金への規制がないが、取材に対してメルカリ自身が資金移動業には該当しないと答えているようだ(PRESIDENT Online 2017年1月16日号「急成長「メルカリ」にはどんな法的リスクがあるか」)。
2-B-③ ポイント制度
利用者から対価を得ていない、いわゆるおまけ的ポイントは資金決済法の対象外であるから、出金の規制がない。しかし「おまけではなく対価を受け取って発行するポイントサービスについては、その名称にかかわらず、前払式支払手段に該当し、資金決済法の適用を受けることとなる」(堀天子『実務解説 資金決済法 第2版』)のであり、出品アイテムの販売代金をプールしたメルカリ口座はポイント制度には該当せず、これで出金規制を回避することはできないであろう。
このように見てくると、利用者のお金をプールしていつでも出金可能なメルカリ口座を説明出来る建て付けは、現状では筆者の知る限り「ない」ように思われれる。とすれば、先のPRESIDENT Online記事が指摘するように出資法の預り金規制との関係はどうなるのか疑問が残る。
3)FinTechと規制
資金決済法の前払式支払手段発行や資金移動業の登録を行うと、登録の手間暇だけでなく、その後の業務においても規制がある。最も影響が大きいのは本人確認(資金移動業)であり、それとは別に顧客財産の保全措置(発行保証金と履行保証金)が必要になる(前払式支払手段発行、資金移動業)。
本人確認は犯罪収益移転防止法に基づくものでマネーロンダリング防止を主眼としており、 FinTechの目指す手軽さとは相反の関係にあって、スタートアップ企業にとっては実務においても顧客獲得においても負担が大きい。この点について詳しい増島弁護士の記事がある(「FinTech時代の本人確認(前編)」)。
時宜に応じた見直しは必要ではあろうが、お金を扱う以上顧客保護のためにも一定の規制は避けられない。老婆心ながら、メルカリは出品者の販売代金を預かるのであれば銀行になって堂々と預り金業務を行うか、あるいは他のFinTechベンチャーと同様に資金決済法に基づき前払式支払手段発行なり(ただし自由に出金できない)、ロジックを整理して資金移動業の登録を行うべきなのではないかと思う今日この頃でありました。
以上、自分なりに調べ考えて書いてきましたが、誤認や見落としがありましたら優しくお知らせ頂けると幸いです。本ブログの記載は全て個人的なものです。
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